ドアの向こうにあるものは*『扉の向こう側』(1)


11月11日(金)に兵庫県立芸術文化センターの「初日おめでとう」を言ったばかりなのに、もう公演が終わってしまった。

早い。早すぎる。

この芝居は進むのがとても早い。舞台上でも60年間なんて、あっという間。

笑って、泣いて、ほろ苦さを残しつつも、でもやっぱり観た後はハッピーな気分になる。

そして、一度観てしまったら、また観たくなって、観るほどに、壮一帆さんと、キャストの方々が好きになっていって(いつものことなんですけどね)、最後には、誰かとお酒を飲みたくなる(笑)。

簡単に言うと、最高に面白いってことか。本当によかったです、壮さん初の翻訳劇にしてストレートプレイが、こんなに面白い作品で。

 ここまでのことを少し振り返ってみよう。初日の数カ月前から、演劇雑誌、twitter、公式ブログなどから情報が届けられていった。

  • 一路さん、まひるちゃん、壮さんの元雪組三人娘のトークの記事
  • 壮一帆さんの単独インタビューの記事
  • 壮一帆さん、金髪ご披露! ショートボブ!
  • 共演の吉原光夫さんのニコ生番組に、岸祐二さんと壮さんが出演
  • お稽古場情報が続々!
  • 壮さんからのお手紙が届く!(FCメンバーズページ)

これらから分かっていたのは、

  • コメディである
  • 壮さんが演じるのはSMクイーン。そのお仕事のコスチュームがすごいことになっている
  • 壮さんのセリフが多くて出ずっぱり
  • 一路さんとまひるちゃんとは結託し、岸さんは本物の悪人で、吉川さんにはタックルされちゃう…
  • 壮さんにとって初のストプレにして、初の翻訳劇。つまり、セリフいっぱい
  • ミュージカル界きっての歌える役者さんたちが「歌」を封印!
  • でも、ちょっとだけ、オマケで歌がある?

といったようなことくらいだったかな。

実はこの戯曲、「ドアの向こうは」というタイトルで、『アラン・エイクボーン戯曲集』に入っていて、上演が決まって間もない頃に、ほんのさわりだけ読んでみたのです。

でも、すぐに本を閉じることになった。少し読んだだけで、脳に司令が走ったの。「これ以上読んではいけない」と(笑)。読まずに観たほうが楽しいという話も聞いたので、「観てから読む」案件と決め、そのままの状態で初日に臨みました。

正解だった。

いやあ、面白かったー! イギリスの劇作家らしく、最初はつかみどころのない感じなんだけど、じわじわと面白くなってきて、いろんな角度から楽しめ、考えられるお話になっているのがさすがだなと。

それに、なんといっても壮一帆さんですよ! 壮さん演ずるプーペイ/フィービーが、すごーくチャーミングで、ひと目で大好きになってしまった。

お仕事は売春婦ですが、ピンチヒッターで呼ばれちゃったSMクイーンだというところがキモで、日本の演劇や映画によく出てくる、情念、情欲、不幸をかたちにしたような、暗く生々しい存在ではありません(笑)。

アラン・エイクボーンさんという英国の劇作家による戯曲なのだから、当然といえば当然なのだけど、外国のコメディ映画に登場する、明るく屈託のない、一人で強く生きてる娼婦の雰囲気がよく出てるの。

「健康的なSMクイーン」っていう、よく考えるとおかしな設定になったのは、壮さんだからかな(笑)。これがもうれつにかわいくて。劇中のセリフから想像すると、相当にハードな人生を送っているんですよ。なのに、このフィービーという女の子が、はすっぱで口の利き方なんかなっちゃいないんだけど(笑)、いたいけな少女みたいな一面もあって。カラッとしていてドライのようだけど、実は情があってかわいい(やっぱり壮さんっぽいな)。もう、見れば見るほどに好きになっていってしまう。

最初(初日)はちょっとおっかなびっくり。でも始まれば、ぐんぐんぐんと力が湧いてくる。劇中のフィービーの特性がまた、まんま壮さん。

危険きわまりない。

衣装も、コートA、スペシャルな仕事着、コートB、バスローブ、ワンピースA、ワンピースBと、七変化くらいあって、どれもめちゃくちゃ似合ってます。バービーみたいなフィービー人形を作ってもらいたいくらい。あの金髪も、壮さんの地毛に違いないというくらいぴったりです(笑)。

「すべての女の子は、どんなものにもなれる可能性を持っている」

ヒラリーさんが女の子たちに向けたメッセージが感動的だったけど、『扉の向こう側』にも、そんなメッセージが込められていると思う。個人的には、フィービーという名前からは、『ライ麦畑でつかまえて』のフィービーを思い出してしまう。

もちろんそれだけじゃなくて、女たちの共同体についての話でもあるし、ジュリアンとフィービーという不幸な二人の子供の話でもあるし、男同志の愛の話でも、暴力についての話でも、疑似家族の話でも、ホテルの話でも、パラレルワールドの話でもある。

つまり、いろんな世界へ抜けられるドアが劇中にたくさん仕込んであるの。面白がれないはずがない。

おまけに、かーわいいカーテンコールまでついているんですよ! 歌わないはずのあの人たちが、役を引きずりながらちょっと気まずそうに(笑)、でもみんななかよく、最後にすてきな贈り物を届けてくれる。

東京公演の初日の開幕時間が近づいているので、ここでこちらも閉めますが、また、いろんなドアを開けながら、感想を書いて行きたいと思います。

ともあれ、『扉の向こう側』東京公演初日です。このあとすぐ、18時30分からです。おめでとうございます!

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