何があたしたちを繋げているの?*『扉の向こう側』(2)

ただいま絶賛上演中の『扉の向こう側』について、思いつくままに。

決定的なネタバレはしないように気を付けているけれど、細部のネタバレはあると思います。どうか、ご容赦を。

*        *        *

『扉の向こう側』の何がすごいって、やっぱりキャストだと思うんです。

出演はこの6名。壮 一帆、紺野 まひる、岸 祐二、泉見 洋平、吉原 光夫、一路 真輝

女性三人がタッグを組んで、自分たちの運命を変えるというお話なので、男優さんたちのことはまた改めて書くとして、きょうは、雪組三人娘について ^ ^

『扉の向こう側』公式サイト

このお芝居の中心になっているのが、1996年―2016年―2036年と、それぞれの時代に生きる女たちが、三つの時代を戻りながら、その原因となっている悪い男をやっつけて、自ら自分たちの運命を変えてしまうというプロット。

好きなんですよ、そういうお話。映画でいうなら『テルマ&ルイーズ』とか、『黙秘』も好きだったなあ。あ、『シカゴ』もそうですね。『マッドマックス怒りのデスロード』なんかも見方によっては。

とにかくそんな、胸がすくような女三人の物語を、時代は違うけれど、雪組でトップスターをつとめた、一路 真輝さん、紺野 まひるさん、壮 一帆が演じるのです。もう、それだけで、「よくぞキャスティングしてくれました!」と、三方礼をしたいくらい。

キャスティングしてくれた方は、この三人のつながりをご存じだったのでしょうか?

  • いちばんの年上でしっかり者として登場するルエラをイチロさん。
  • ちょっと軽いところがある金持ち娘のジェシカをまひるちゃん。
  • ガラが悪く乱暴なのに、情があって、困った人を放っておけない、20年後にSMの女王様のお仕事をしているプーペイ/フィービーを壮さん。

これが、きっちりとした翻訳劇なのに、アテガキかと思うくらい、見事にハマッてる。

きのう(11月19日)の雪組三人娘トークでも、絶妙のトリデンテぶりを発揮していたけど、この三人だから、アテガキかと思わせるレベルにまでなったのじゃないかなあ。

イチロさんのルエラが、賢くて、勇気があって、正義感にあふれていて、司令塔的な役割をするのですが、イチロさんが素晴らしいのは、かわいくて、どこかほっとするような、あたたかく全体を包み込む力を振りまいているところ。ルエラって、例えばアメリカ映画だったら、スーザン・サランドンとかグレン・クローズなんかがたくましく演じちゃうんだろうけど、イチロさんにかかると、ボケの魔法がかかるというか(もちろん褒めています)、ほかの誰にも真似できないような魅力を持ったルエラになる。ほんと、あたたかくて、かわいいの(二度言った)。

まひるちゃんのルエラは、久しぶりの舞台で不安でたまらなかったなんて思えないほど、ちょっとノーテンキなお嬢さまミセスをチャーミングに演じている。若いリースとのバカップルぶりは最高だし、黒衣の女になって出てくるところのホラーの女王っぷり。うまい! マンガに描いたような美女だからかなあ、梅図先生の作品に出てきそうな…。とはいえ、ルエラがジェシカのことを「彼女って、男を殺人に走らせるタイプ」というとき、いつも宝塚時代の『アンナ・カレーニカ』を思い出します。ファムファタールを演じられる華と演技力とを備えた素晴らしい女優さんなのです。

イチロさんとまひるちゃんだから、壮さんも安心して、フィービー/プーペイとして、のびのびのびのび演じているんだと思う。サッカーのポジションに例えると、イチロさんのルエラが司令塔的ミッドフィルダーなら、まひるちゃんがサイドアタッカー、壮さんがフォワードかな。元雪組のトリデンテ。

個人的に笑ってしまうのが、ルエラの救出劇です。ジェシカとフィービーがものすごい力を振り絞るところ、宝塚大運動会の綱引きを思い出して、毎回クスッとなる。あの、「優勝しなくてもいいから綱引きには勝て」と、代々厳命されているという雪組伝統の綱引き。ルエラが応援団に回っているところもらしいなあと。ベッドカバーの色も雪組カラーの緑色に見えるし。

宝塚時代――イチロさんは、まひるちゃんと壮さんが初舞台を踏んだときのトップスターでした。そのイチロさんの最後の作品が、伝説の『エリザベート』。まひるちゃんは雪組に配属され、『追憶のバルセロナ』でトップ娘役として退団。そのときには壮さんは雪組にいて、同期生として見送った。宝塚大劇場千穐楽での壮さんの泣き顔は忘れられません。壮さんは、初舞台後に配属されたのは花組だったけれど、雪花間をワープしながら、最後は雪組のトップスターとして『一夢庵風流記 前田慶次』で退団。

――とまあ、不思議なご縁ではあります。

だからというつもりはないけれど、その三人が出会う2016年の場面は何度見ても、楽しくって、あたたかい気持ちになる。あの場面が、ある意味でこのお話のラストシーンなんだと思う。

「乾杯しましょう。生きてることに」「生きてることに」

三人でシャンパングラスを合わせるときの幸福感。

この場面でのフィービーとジェシカのセリフのない戦いも、素の壮さんとまひるちゃんを感じさせて、楽しい見どころに仕上がっています(フィービーの反応!)。

「何があたしたちを繋げているの? ジュリアン?」

劇中、ことの次第を理解しようとして、ルエラはこう言うのだけど、最後に、実はルエラだったと気づくことになる。いえ、フィービーでもあるのだけれど。一周回って、確かにジュリアンだったともいえるんだけど。

それはまた別の話になりそう。ともかくここでは、雪組が三人をつなげているということで。

すてきな雪組OGトリデンテに乾杯!

 

 

広告